失恋などから立ち直るための本「HOW TO FIX A BROKEN HEART」(洋書)

目次

 

1)本の紹介

実際の研究結果や著者ガイ・ウィンチ(Dr. Guy Winch)の経験から、失恋などから立ち直る方法について述べている本。

著者は心理学者で、かつニューヨークにクリニックを開いている。

またTED Talkでもスピーチを行ってたりする。

 

全体の流れとしては、著書の元に相談にきた患者を元にして話が進む。

その患者たちというのが

・二度の闘病を乗り越える精神力にも関わらず、半年付き合った彼氏(Rich)に振られて、ずっと前に進めずにいるKathy

・最愛のペット(Bover)が死んでしまい、両親が亡くなった時より立ち直れずにいたBen。

・たった一回のデートで振られ、ものすごい落ち込みを見せるLauren。

・何十年前に別れた彼女をネットストーキングし続けるDev。

など割と個性的なところがあり、実用的な面を除いてもお話として面白かった。

個人的なお気に入りはDev。すがり方がみっともなさすぎて笑ってしまった。

でも一番闇が深いのはRichだと思う。人間関係の切り方がすごい。

 

洋書であるが、単語も易しく文章量も多くないため、読みやすい本であった。

また、本書のクライマックスになる第4章の一節”The Many Different Ways We Need to Let Go”の冒頭は少し胸にくるものがあった。

 

振られて辛い人もそうでない人もオススメの一冊。

 

2)要約(以下ネタバレ)

第1章 どのようにして心の傷は見捨てられるのか

大切な人を失うのはとても辛いことである。このような時に感じる心の傷から回復するには、周りからのサポートが重要である。

しかしながら時に心の傷というのは軽んじられ、サポートがうまく得られない場合がある。例えば、

・失恋やペットの死というのは、両親の死などと比べて軽んじられ、社会からのサポートを得にくい。

・ずっと立ち直れずにいると、最初は思いやりを見せた人も次第にうんざりし始め、サポートがなくなることがある。

実際にどれだけ傷ついたかではなく、どれだけ傷つくべきと思われているかによって、他人からの思いやりは決まってくるのだ。

 

また自分自身が、心の傷を恥じてしまうことがある。例えば、

・振られたのが恥ずかしくて周りに相談できない。

・ペットが死んだだけなのに、なぜこんなに辛いんだろうと思ってしまう。

このように心の傷を自分の中だけに留めてしまい、自分を責めすぎてしまう時がある。

 

以上のように心の傷は時に軽んじられ、それが心の傷からの回復を妨げることがある。

しかしなぜ、このように心の傷は軽んじられてしまうのだろうか?

それは、人々が心の傷がもたらす影響をちゃんと認識していないからである。

 

第2章  心が傷ついた時、脳や体もまた傷ついている

心の傷が影響を及ぼすのは、心や感情だけではない。 

 

(2−1)物理的な痛みとの比較

失恋したばかりの人に元恋人の写真を見せると、身体的な苦痛を感じた時と同じ脳の部位が活動する。

そればかりでなく、その苦痛の程度は”身体的に我慢できない痛み”を少し下回るだけのものである。

(身体的に我慢できない痛みを10としたら、失恋の痛みは7〜8程度)

つまり、心の傷を負うことにより、かなりのレベルの身体的な不快感を数週間から数ヶ月味わうことになる。

腹痛や頭痛を感じている時、集中力やIQといった様々な能力が下がる。このことを考えれば、心の傷がいかに深刻な影響を生活に与えるかがわかる。

 

(2−2)中毒

脳に関する研究によると、人は失恋をすると麻薬中毒者のような反応を起こすという。

つまり、コカインやヘロインを求める麻薬中毒者のように失った人を求めてしまうのだ。

これにより、記憶の中で失った人を思い出そうとしたり、めちゃくちゃな理由をつけて連絡したり会うことを正当化してしまう。

また今の時代なら、ソーシャルメディアなどで失った人を追いかけてしまったりする。

 

ここで強調をしておきたいのは、自分はもう乗り切ったと思っていても、タバコや薬物を絶った人のように、強いストレス等を感じた時にこの症状が起きてしまう時があるということである。

さらに強調をしておきたいのは、タバコや薬物を絶った人とは違って、これを中毒症状だとはみなしていない場合があることである。

例えば、なんとなく気になるぐらいの気持ちで 、元カレや元カノのことを調べてしまうことはないだろうか。

しかし、このような時は大抵ストレスを感じていたり、自分の今の関係が上手く行っていない時なのだ。

つまり、自分で気づいていないだけで、中毒症状をぶり返してしまっている。

 

そして、このほじくり返すような行動により、心の傷の回復が遅くなってしまうのである。

 

第3章 回復を妨げる多くの間違い

第2章で述べたように、失恋などで傷ついた時、私たちは往々にして以下に示すような適切ではない行動をとってしまう。

そしてこれが心の傷の回復を遅らせることがある。

 

(3−1)過度の自己非難

自分は何かいけないことをしてしまったのだろうか、あの時ああしていれば。

また、自分がもっと可愛ければ、もっと笑顔が素敵だったら。

人は失恋などで傷ついた時、自分の行動やあり方について、様々な自己非難を行うことがある。

このような非難は別に異常なことではない。

しかし、自尊心の低さなどに起因して、過度に自分を非難してしまうのは問題である。

例えば、あまりにも長い期間自分を責めすぎてしまったり、あまりにも現実から乖離した非難をしてしまう場合である。

(周りから何回も可愛い/かっこいいと言われているのに、自分がブサイクで振られたと思い込んでしまったり)

このような過度の自己非難は心の傷の回復を遅らせてしまう。

 

(3−2)失った相手を理想化すること

 人は振られた時に、もうこんないい人とは出会えない等と、失った相手を理想化してしまうことがある。

このような理想化は、喪失感を増大させ、心の傷から立ち直るのを遅らせてしまう。

このような理想化を防ぐためには、相手の嫌なところを思い出して、意図的に認識のバランスをとることである。

これは、相手を嫌いになったり悪口を言うということではない。

もうこんな人に出会えないかもという不安を取り除き、前に進むために行うのだ。

 

(3−3)避けること 

大切な人を失った時、その人に関わる場所やものを避けてしまうことがある。

しかし、心理学的に見て、あることから避けることは逆にその存在を大きくしてしまうことがある。

 

これを防ぐには、避けていた場所やものと新たな関係を築くことである。

 

例えば、元彼と行ったレストランを友達と行ったりするのだ。

最初のうちは元彼とのことを思い出してしまうが、何回も尋ねることにより段々と古い思い出が消えていく。

 

(3−4)思い出の品をいつまでもとっておくこと。

思い出の品を取っておくことは、失った人との感情的な繋がりがまた存在していることを反映している。

逆にいえば、思い出の品を捨てることは、感情的な繋がりを手放すことである。

思い出の品を捨てることは、時に罪の意識や裏切りの感情を伴うことがある。

しかし、心の傷を癒やすためには、思い出の品を処理するべきである。

 

第4章 回復は心から始まる

心の傷から立ち直るためには、上で述べたような行動を避けるだけではいけない。

回復への最終ステップ、つまり、前に進むという決心をつけなければいけない。 

 

(4−1)Self-compassion(自分に優しくする)/マインドフルネス

最近の研究では、心の傷から立ち直るために、中立的で優しさと思いやりを持った内なる自分を育てることが有効であると言われている。

 

人はミスをしたりして上手くいかない時に自分を責めてしまうことがある。

例えば、自分がのろいからいけないんだとか、全部自分のせいなんだと思ってしまうことは誰にでもあるだろう。

 

しかし、友達が同じように失敗した時に、そのような言葉を投げかけるだろうか。

普通友達が上手くいかなかったら、励ましたり思いやりを持って接するだろう。

そのような態度を自分自身にも向けるのだ。

 

また、ネガティブな考えや記憶を反芻することは習慣になりやすい。

これに対抗する術として、マインドフルネスがある。

 

マインドフルネスは自分の意識を、過去や未来ではなく現在に集中させることである。

マインドフルネスは、ストレスなどを低減し、精神的なメリットがあるという。

 

 (4−2)自分自身を取り戻す

数々の研究で、別れたあとに自分自身を取り戻し、自分を再定義できた人は失恋からの回復が早くなることがわかっている。

逆に、別れたあとに自分自身を再定義できない人は回復が遅くなってしまうという。

 

そして様々な研究において繰り返し言われているのは、心の傷から立ち直るのにもっとも効果があるのは、新しい人を見つけることじゃないかということである。

 

3)感想

toeicの勉強として読んだが、内容は非常にためになるものであった。 

これは失勉(失恋中の勉強)にとって非常にいい教材だと思う。

 

ただ、全体的に良いことが書いてあるなと思ったが、気になった箇所が複数ある。

 

まず、Bover(Benのペット)の思い出の品を捨てる必要はないと思った。

確かに、失恋などで思い出の品を捨てることは有効な方法だと思う。

しかし、ペットの死などの場合に思い出の品を捨てるのは本当に良いことだろうか。

むしろ捨てたことを一生後悔してしまうだろうと思った。

 

また、前に進むことに重きを置きすぎて、自分を見つめ直すことの重要性が語られていないように思った。

確かに、過度に自分を非難するのはダメだし、自分に思いやりを持つことは良いことだと思う。

しかし、振られた時は自分の悪いところを把握することは大切である。

なので適切に自分を見つめ直す方法とかも書いてくれたら良かったと思う。

 

上では気になった箇所をあげたが、本書の内容は基本的にスタンダードかつ納得のいくものである。

そのため、この本を読むことにより「自分は今、自分を責めすぎているな」等、自分のことを少し客観的に見られる。

このことは、 どんな選択をとるにしても必要なことかなと思う。

 

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